徒手空拳

――― 今、真剣勝負が始まる! ―――

真剣勝負がほとんど見られなくなった。どこか、全人格を賭して戦う姿が見られなくなって、社会全体がぬるくなった。仕事の上でも、スポーツの世界でも…。

我中村天風師は、積極と集中を説いたが、自分を含めて、生きることへの貪欲さが、平和ボケした現在日本の中には欠落している。

良きにしろ悪しきにしろ、自己の見栄や虚飾をかなぐり捨てて勝ちたいという心の根にある欲求を追求している姿に出会わない。

いいのかなあ…。時々、不安と虚しさを覚えるのは、俺だけかな。

一億総白痴化している。突きつめて考え抜けば、色々の結果や影響が見えてくるのに、考えようとしないから簡単にわかったような気がして、物事を流していき、出た結果に唖然として後悔する。その繰り返しである。便利さということは、本質を見失っていくことだということに気付かない。例えば、電話ができ、携帯ができ、メールができ、通信手段の発達は便利だが、手紙を書くことや会いに行くことが無くなって、大切な人間性が失われる。

今、日本は大きな曲がり角に来ている。真剣に自分の頭で考え抜いていけば、TPPやマイナンバーや、原子力発電や、安全保障や消費税等々、社会が本当に自由主義、民主主義国家なのか、と、首をかしげざるを得ない状況にあることは理解できるだろう。

せめて我々の空手の世界だけは、本物でありたい。真剣勝負で生きる場でありたい。と希うのである。

風雅 遊